自由が丘の歯医者コラム

インプラント治療を習得するまで(part 2)

憧れのインプラント治療、その現実

学生時代、恩師から聞いたインプラント治療にすっかり魅了された私は、卒業するとすぐに福岡の歯科医院へ就職しました。

そこは、日本歯科インプラント学会の会長を務められていた先生が診療をサポートされているクリニックでした。

「ここなら、大学で学んだインプラント治療を実際の臨床で学べる。」

そんな期待を胸に、私は意気揚々と臨床の世界へ飛び込みました。

ところが——。

そこで私が目にしたインプラントは、大学で教わったものとはまるで違っていました。

「オッセオインテグレーション」ではなかったのです・・

私が大学で学んでいたのは、ブローネンマルクに代表されるオッセオインテグレーション型のインプラントでした。

オッセオインテグレーションとは、簡単に言えば、インプラント体と周囲の骨が直接的に結合する現象です。

天然歯の歯根とは構造も生理学的な性質も異なりますが、適切な条件で骨結合が成立すれば、インプラントは単独の人工歯根として咬合力を受けることができます。

学生だった私にとって、これはとても魅力的な考え方でした。

「失われた歯の根の代わりになるものを、骨の中につくる。」

それまでの補綴治療とは異なる、まったく新しい発想だったからです。

ところが、就職先で使われていたのは、ブレードタイプのインプラントでした。

当時の私は、その違いに少なからず驚きました。



ブレードタイプのインプラント

そこで使用されていたのは、いわゆるリンコー(Linkow)に代表されるブレードタイプのインプラントです。

ブレードタイプは、薄い板状のインプラント体を顎骨内に埋入するタイプで、現在一般的にイメージされるスクリュータイプのオッセオインテグレーション型インプラントとは、設計思想も臨床的な使われ方も異なっていました。

当時の私が特に強く感じたのは、

「大学で教わったインプラントと、実際の臨床で使われているインプラントは、こんなにも違うのか」

ということでした。

そして、その違いは単なるインプラント体の形状の違いではありませんでした。

インプラントだけで完結しない治療

オッセオインテグレーション型インプラントでは、適切な条件で骨結合が成立すれば、インプラントそのものが人工歯根として機能します。

一方、当時私が目にしたブレードタイプの治療では、インプラント単独で失われた歯を置き換えるというより、残存歯と連結して補綴装置を支えるという考え方が中心でした。

そのため、一本の歯を失ったからといって、単純に「そこへインプラントを一本入れる」という治療にはなりません。

隣接する歯や、場合によってはさらに広い範囲の歯とインプラントを連結し、ひとつの補綴装置として機能させる必要がありました。

結果として、治療の範囲は必然的に大きくなります。

一本の欠損から始まったはずの治療が、いつの間にか一口腔単位の治療へと広がっていく。

その光景を、卒業したばかりの私は目の前で見ることになりました。

「歯の代わり」とは、いったい何なのか

そこで、私は少しずつ考えるようになりました。

インプラントとは、そもそも何のためにあるのだろう。

歯を失った場所に何かを入れることが、インプラント治療なのだろうか。

それとも、失われた歯の機能をできるだけ単純に、そして独立して回復することこそが、インプラントの意味なのだろうか。

大学で聞いた、

「骨と結合した人工歯根」

というインプラントのイメージ。

そして、目の前で行われている、

「残っている歯と連結して支える」

というインプラント治療。

その二つの違いは、私にとって非常に大きなものでした。

もちろん、ブレードタイプのインプラントにも、それが使われていた時代の背景があり、当時の臨床において一定の役割を果たしていたことは理解しています。

しかし、少なくとも私自身が大学で抱いた「人工歯根」というインプラントへの期待とは、かなり違ったものでした。

そして、この経験が私にひとつの疑問を残しました。

「本当に、これが私が学びたかったインプラント治療なのだろうか?」

卒業したばかりの私は、まだその答えを持っていませんでした。

ただ、この疑問こそが、私をさらにインプラント治療の本質へと向かわせることになります。

1990年代初頭。

憧れのインプラント治療を求めて飛び込んだ臨床現場で、私は初めて、

「インプラントという名前が同じでも、その治療の考え方はまったく違う」

ということを知ったのでした。

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