自由が丘の歯医者コラム

インプラント治療を習得するまで(part 1)

1990年。私がインプラントに惹かれた理由

私がインプラント治療に興味を持つようになったのは、1990年、まだ歯学生だった頃のことです。

臨床実習で私を担当してくださった歯科補綴学の助教授が、当時としてはまだ珍しかったブローネンマルク・インプラントを臨床に取り入れていました。

「これは、これからの欠損歯列の治療を変える可能性がある」

先生は、そんなインプラント治療の可能性を、私たち学生に熱心に語ってくださいました。

当時の私には、その治療がどれほど画期的なものなのかを理解するだけの知識はありませんでした。

けれども、なぜか強く惹かれた。

その理由は、インプラントそのものの新しさだけではありませんでした。



「経験」ではなく「根拠」で語られる歯科治療

私が興味を持ったのは、そこに科学的なエビデンス(根拠)があったことでした。

少し厳しい言い方になってしまうかもしれません。

当時、私が大学で学んでいた歯科学の多くは、先人たちが長年の臨床経験から積み上げてきた知識を体系化したものでした。

もちろん、それらには大きな価値があります。

しかし、科学的な統計手法によって治療の有効性を検証し、その結果をもとに治療方法を考えていくという考え方は、当時の私にとって決して身近なものではありませんでした。

中学・高校と、いわゆる進学校で学んできた私にとっては、大学で受ける歯科の講義に、どこか物足りなさを感じていたのも事実です。

「本当にそうなのだろうか?」

そんな疑問を抱きながら授業を聞いていたことも、少なくありませんでした。

スウェーデンの歯科学との出会い

ところが、そんな私の探究心を刺激する講義がありました。

それが、スウェーデンのカリオロジー(Cariology)とペリオドントロジー(Periodontology)に立脚した予防歯科学、そしてオッセオインテグレーションを基盤としたインプラント学でした。

そこでは、

「なぜ、この治療をするのか」

「その治療には、どのような根拠があるのか」

「実際に治療を行った結果、どうだったのか」

ということが、科学的なデータをもとに語られていました。

それまで私が抱いていた歯科医学に対するイメージとは、少し違っていました。

経験だけではなく、観察し、仮説を立て、検証し、その結果をまた臨床に生かしていく。

そんな歯科学のあり方に、私は強く惹かれていったのです。

学生だった私にとって、インプラント学は単なる「新しい治療技術」ではありませんでした。

それは、

「歯科治療も、もっと科学的に考えることができるのではないか」

ということを教えてくれた、最初の入り口だったのだと思います。

1990年。

まだ何も知らなかった歯学生の私が、インプラントという治療に興味を持った小さなきっかけ。

振り返ってみると、それはその後の私の歯科医師としての考え方を形づくる、大きな転機のひとつだったのかもしれません。

次章:インプラント治療を習得するまで(part 2)