自由が丘の歯医者ブログ

BLOG

インプラント埋入と骨吸収:最新知見から考える治療戦略2011.09.04

抜歯後には歯槽骨の吸収が起こるため、その後にインプラントを埋入することが困難になる場合があります。

では、骨吸収を防ぐ目的で"早期にインプラントを埋める"という従来の考え方は、果たして有効なのでしょうか?
今回は、このテーマに関する最新の研究を抄読しました。

2011年9月2日金曜日は、アストラテック インプラント システムに関連する論文を抄読しました。

毎週金曜日は、American Board of PeriodontologyのMemberである西堀 雅一先生の院内勉強会にお邪魔しております。
Interdisciplinary Study Club Tokyo 西堀歯科勉強会

一本目の論文は、上顎単根歯の抜歯と同時にインプラントを埋入することによって骨吸収を抑制できるという従来の定説を検証した、イエテボリ大学の研究でした。
結論としては「抜歯と同時にインプラントを埋入しても、歯槽骨頂幅は一定程度減少する」というもので、従来考えられてきた"ソケットプリザベーション効果"は限定的であることが示唆されました。
また2004年の Chen らのレビュー以降、「インプラントと骨の隙間は狭い方がよい」という考えが一般的でした。
しかし本研究では、隙間がやや広い方が血餅の安定につながり、成熟した骨が形成されやすいという、従来と正反対の仮説が検証されていました。
実際、研究結果ではテーパー状インプラントよりもストレート状インプラントの方が、周囲骨のギャップを回復する傾向を示していました。
インプラントシステムによって研究結果が変わることは周知の事実ですが、Xive システムと Ankylos システムを導入している私自身の臨床経験でも、この研究の仮説に近い感覚があり、大変興味深く拝読しました。
web_photo33.jpg
今回の勉強会では、米国歯周病学会認定の歯周病専門医であり、六本木ヒルズ西堀歯科の副院長を務める菅野先生から、研究背景について分かりやすい解説をいただきました。また座長である西堀先生からは、過去の定説が生まれた歴史的背景と今回の論文の妥当性についてご意見を伺い、理解を深めることができました。
さらに、西堀歯科医院の若い医局員の先生方も、実験デザインにおける問題点や疑問点を活発に議論されており、この会のエビデンスレベルの高さを改めて実感しました。
今月で12年目となりますが、今年も可能な限り参加し、学び続けたいと思っております。