欧米で報告されている高いインプラント成功率を背景に、日本では異なるデザインのインプラントが十分な検証なしに使用されているという問題を、このブログでも何度か取り上げてきました。
2011年10月21日(金)は、インプラント周囲の粘膜炎(peri-implant mucositis)および骨欠損を伴う周囲炎(peri-implantitis)に対する治療法に関する論文を題材に、抄読会が行われました。
毎週金曜日は、American Board of Periodontology の Member である西堀 雅一先生の院内勉強会に参加させていただいており、今回もその一環です。
Interdisciplinary Study Club Tokyo(西堀歯科勉強会)はこちら
■ 今回取り上げた論文
Anti-infective treatment of peri-implant mucositis: a randomised controlled clinical trial.
Clinical Oral Implants Research, 2011
Non-surgical treatment of peri-implantitis using an air-abrasive device or mechanical debridement and local application of chlorhexidine: a randomized clinical study.
Journal of Clinical Periodontology, 2011
■ 1本目:軽度インプラント粘膜炎に対する治療法の検証
1本目の論文は、欧州インプラント学会(EAO)の研究グループによるもので、軽度のインプラント粘膜炎に対してどの治療が有効かを検証したランダム化比較試験です。
結果として、抗菌的アプローチが一定の改善効果を示し、早期段階での適切な介入の重要性が再確認されました。
■ 2本目:重度インプラント周囲炎への非外科治療の効果
2本目の論文は、骨欠損を伴う進行したインプラント周囲炎に対して、非外科的治療(エアアブレージョンや機械的デブライドメント)+クロルヘキシジン局所投与がどこまで有効かを検討した前向き研究です。
重度例では限界はあるものの、症状の改善や炎症抑制に一定の成果が見られ、既存の知見と一致する結果でした。

■ インプラント周囲炎は"起こりやすい疾患"である
欧米で近年発表されている研究では、インプラントの種類や設計によっては、数年経過すると非常に高い確率でインプラント周囲に炎症が生じることが警告されています。
その一方で、歯周病専門医の間では、インプラント周囲炎に対するさまざまな治療アプローチが議論され、根拠に基づく治療法の確立が進んでいます。
■ 西堀歯科勉強会での取り組み
当勉強会では、欧米の歯周病専門医と同等レベルで、インプラント周囲炎に関する最新論文をくまなく抄読し、治療法を検討しています。
今回のディスカッションを通して、インプラント周囲炎に対する治療法の方向性が、徐々にこの会の中でコンセンサスとして固まりつつあることを感じました。



