近年の研究報告では、インプラント内部のスクリュー接合部が細菌に汚染され、そこからインプラント周囲の骨吸収が引き起こされる可能性が示唆されています。
2011年10月7日(金)は、まさにこの「インプラントとアバットメント接合部の細菌汚染」をテーマとした論文抄読会が開かれました。
毎週金曜日は、American Board of Periodontology のMemberである西堀雅一先生の院内勉強会へ参加させていただいており、今回もその一環として抄読会が行われました。
Interdisciplinary Study Club Tokyo 西堀歯科勉強会
Bacterial Colonization of the Implant-Abutment Interface Using an In Vitro Dynamic Loading Model, J Periodontol 2011
Bacterial Leakage in Implants With Different Implant-Abutment Connections: An In Vitro Study, J Periodontol 2011
■ インプラントの構造と汚染が起こる理由
インプラントは大きく分けて以下の2つで構成されます。
- フィクスチャー:顎の骨に埋入される部分(人工歯根)
- アバットメント:上部構造(かぶせ物)を支える芯となる部分
この2つはスクリューで強固に連結され、天然歯のように「根」と「歯冠」を再現します。しかし、近年ではこのスクリュー連結部のわずかな隙間から細菌が侵入することが問題視されています。
スクリュー内部が細菌に汚染されると、その周囲に慢性的な炎症が起き、結果としてインプラント周囲の骨が吸収される(失われる)リスクが高まると考えられています。
■ 今回の2つの論文が示したこと
今回抄読した2本の論文は、いずれも「インプラントとアバットメントの接合部がどれほど細菌汚染を受けるのか」を実験的に比較した研究です。
研究デザインは以下のように異なります。
- 動的荷重(噛む力)を加えて内部汚染を調べた研究
- 連結した際に細菌がどこまで侵入・拡散するかを調べた研究
実験方法は全く違うにもかかわらず、どちらの論文でも同じ結論に達しました。
「インプラントとアバットメントの接合部のデザイン(構造)によって細菌汚染の起こりやすさは大きく異なる」
つまり、構造上わずかでも「細菌の入り込みやすい設計」になっているインプラントは、長期的に見ると周囲骨吸収のリスクが高くなる可能性があるということです。
■ 今後に向けての疑問と課題
今回の抄読会を通じ、私自身に新たな疑問が生まれました。
- 骨吸収は「接合時の汚染」が原因なのか?
- それとも「噛む力による動的荷重」で内部が汚染されることが引き金なのか?
この点については、今後の研究でより深く検証していきたいと思います。



