欧米では高度なインプラント治療の多くを歯周病専門医が担っており、治療の根拠も歯周病学の視点から深く検討されています。
2011年9月9日金曜日は、西堀雅一先生によるプレゼンテーションを拝聴しました。
毎週金曜日は、American Board of Periodontology の member でいらっしゃる西堀雅一先生の院内勉強会にお邪魔しております。
Interdisciplinary Study Club Tokyo 西堀歯科勉強会
今回のテーマは、「インプラント周囲に起こる骨吸収を、歯周病学的観点から考察する」という内容でした。(※英題を私なりに意訳しています。)
インプラント治療が安全な歯科医療として確立された近年ですが、世界では形状や構造の異なるインプラントが次々と登場し、その種類は数千に及ぶとも言われています。
ところが実際には、これら多数のインプラント体の中で、臨床家や研究者によって治療予後が科学的に検証され、英論文として成立しているのはごく一部のインプラントシステムのみです。
西堀先生は、ペンシルベニア大学でブローネンマルクインプラントを学ばれた後、帰国まもなくアストラテックインプラントを導入し、現在ではストローマンインプラントも臨床に取り入れておられます。
実はこの3つのインプラントシステムこそが、世界的にも"インプラントの源流"と呼べる存在であり、臨床成績が最も蓄積されている主流のシステムです。この事実は、患者さんだけでなく若い先生方にもあまり知られていないかもしれません。
つまり、世界中の臨床家や研究者が科学的に検証しているインプラントはこの3システムであり、信頼できる英論文の裏付けがあるのも、この3つのインプラントのみなのです。
今回のプレゼンテーションでは、この3つのインプラントシステムを用いた治療経過の違いについて、歯周病学分野の研究文献を引用しながら、周囲骨吸収や生物学的幅径との関連を体系的に考察されていました。
日本はもちろん世界的に見てもインプラント治療において卓越した臨床実績を誇る西堀雅一先生ですが、ペンシルベニア大学時代の師であり歯周補綴の権威である Morton Amsterdam 先生の教えを大切にされ、今も臨床の指針を科学に基づき絶えずアップデートされています。
Morton Amsterdam 先生の教科書には、次のような一文があります。
"One of our great difficulties in dental education has been to develop 'biologically-oriented' clinicians."
"A 'biologically-oriented' clinician is not a Ph.D. in basic science who also dabbles in clinical practice or a clinician who dabbles in pseudo-research. Rather he should be a clinician totally knowledgeable about the basic science aspects of his field, who intelligently uses this information in the treatment of his patients and their relevant problems."
(※抜粋:生物学的背景を理解し、それを臨床へ適切に応用できる"生物学的思考をもつ臨床家"こそが歯科医療に求められる、という意味合いです。)
この教えを頑なに守り、患者さんにとって最良の治療を追求し続ける西堀先生。その臨床姿勢に深く感銘を受け、自分自身もより多くを吸収して臨床に還元したいと強く感じた勉強会でした。



