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歯肉の中まで虫歯が進行した歯を残すために ― 生物学的幅径を考慮した治療の基本2012.10.30

虫歯が歯肉の中まで深く進行すると、歯の残っている位置と周囲の骨との関係が、治療計画に大きな影響を与えます。これは、歯をどこまで保存できるかを判断するうえで非常に重要な視点です。

虫歯によって失われた部分は、通常は被せ物(補綴物)で補います。しかし、被せ物の縁には細菌が付着しやすく、生体には「細菌から一定の距離を保とうとする作用」があります。この距離が十分に取れない場合、歯肉の炎症や腫れが起きやすくなります。

そのため、もし距離が不足したまま被せ物が装着されていると、丁寧に歯磨きをしていても出血が続いたり、歯肉の赤み・腫れが改善しにくい場合があります。

生物学的幅径の侵襲を示したイメージ図
※生物学的幅径の侵襲を示したイメージ図

骨と歯の位置関係の指標となる距離は「生物学的幅径(biological width)」と呼ばれ、1961年にGargiuloらによって平均値が報告されています。これは、歯周治療の後に補綴治療を計画する際に参考とされることが多い概念です。

生物学的幅径の概念を示すイメージ図
※ 生物学的幅径の概念を示すイメージ図

生物学的幅径を確保するための主な方法

生物学的幅径を確保し、炎症を防ぎながら補綴物の安定を目指すために、次のような方法が用いられることがあります。

  • クラウン・レングスニング法(Crown Lengthening)

歯の位置そのものは変えず、周囲の歯肉や骨を整えて必要な距離を確保する方法です。歯肉弁根尖側移動術などの歯周外科処置を併用して行われます。

  • エクストルージョン法(Extrusion・歯牙挺出)

骨を削らずに歯根を矯正的に引き上げ、適切な距離を確保する方法です。歯を保存する可能性を検討する際の選択肢の一つとなる場合があります。

いずれの方法も専門的な判断が必要であり、患者さんの状態や治療後の清掃性、将来的な歯の残し方など、複数の観点から総合的に検討されます。

院内勉強会での症例検討について

当院では、治療の質を高めるため院内外の勉強会に継続的に参加し、治療計画の検討を行っています。American Board of Periodontology の Member である西堀 雅一先生が主宰する勉強会「Interdisciplinary Study Club Tokyo」に参加し、多角的な視点で症例の検討を行っています。

先日は、歯周病認定医である 足立 芳洋先生 による症例検討が行われました。クラウン・レングスニングを活用した歯の保存や清掃性の改善を目指した歯肉の形成など、多様な症例が提示され、当院の臨床においても参考となる視点が紹介されていました。

治療方針は患者さんによって異なります

歯を残す方法を検討する場合も、抜歯を含めた他の治療法を選択する場合も、それぞれに特徴があります。どちらか一方が優れているというものではなく、患者さんの状態・生活背景・今後の希望を丁寧に伺いながら、一人ひとりに適した治療方針を決定していくことが大切です。

歯周病治療でお困りの方へ

目黒区・世田谷区・大田区、東横線・大井町線・田園都市線沿線にお住まいで、歯周病治療や歯の保存に関するご相談をご希望の方は、自由が丘駅から徒歩3分の当院へお気軽にお越しください。

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