自由が丘の歯医者ブログ

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歯根分岐部病変(奥歯の根の分かれ目に及ぶ歯周病)とは?研究データからみる治療の難しさ2012.04.09

奥歯は、噛む力を受け止めるために複数の根(歯根)を持っています。しかし歯周病が進行して根の分かれ目にまで炎症が及ぶと、構造が複雑なため治療が難しい領域になります。この状態を「歯根分岐部病変」と呼びます。

奥歯は複数の根を持つため、進行した歯周病は複雑化します。

今回は、2012年4月6日の院内勉強会で「歯根分岐部病変」に関する2本の臨床研究を抄読し、内容をわかりやすくまとめました。

参加している勉強会について

毎週金曜日は、American Board of Periodontology(米国歯周病専門医機構)Memberである 西堀雅一先生の院内勉強会に参加しています。

Interdisciplinary Study Club Tokyo(西堀歯科勉強会)

参考文献(抄読した論文)

論文1:EMD(エナメルマトリックス誘導体)を用いた再生療法の2年予後について

最も治療が難しいとされる上顎の歯根分岐部病変に対して、EMDというタンパク質を用いた再生療法を行い、2年間の経過を追った臨床試験です。

研究から読み取れるポイント

  • 通常の外科治療と比較し、EMDを併用した群のほうが分岐部病変の残存率が低かった。
  • 一方で、データのばらつき(異質性)が大きく、症例ごとの差が目立った。
  • 術後6ヶ月に比べ、2年後の結果が悪化している症例もあり、長期的な予知性は限定的と考えられる。

総合すると、「上顎の歯根分岐部病変は極めて難易度が高く、治療には高度な外科手技と症例選択が重要」という、従来の知見と一致する内容でした。

論文2:歯根分岐部病変の治療法に関するメタアナリシス

2本目の論文は、複数の治療法を比較したメタアナリシスで、吸収性GTR膜を用いた再生療法が良好な結果を示したというまとめでした。

考察ポイント

  • 文献ごとに「再生」の定義が異なっており、結果の比較が難しい。
  • 外科手技や症例選択基準が統一されていないため、治療成績の精度には限界がある。
  • 新規の知見は少なく、従来の報告と大きく違いはない内容。

そのため、歯根分岐部病変に対する治療方針を立てる際には、症例ごとの状態を精密に評価し、予知性の高い治療法を慎重に選択する必要があります。

歯周病専門医として大切にしていること

他院で改善が得られなかった患者さんが専門医を訪れるケースは少なくありません。専門医には、患者さんの期待に誠実に向き合い、正確な診断・適切な治療計画・長期的な視点が求められます。

私自身、日々の臨床と勉強会を通して知識と技術の研鑽を続け、予知性のある治療法を丁寧に選択する姿勢を大切にしています。

歯周病治療をご検討の方へ

目黒区・世田谷区・大田区、東横線・大井町線・田園都市線沿線にお住まいの方で、歯ぐきの腫れ・出血・口臭などが気になる方は、自由が丘駅徒歩3分の当院(歯周病専門医)までご相談ください。