歯周病は、日本人の多くが罹患するといわれる感染性疾患で、進行した状態では専門的な知識と高度な技術が求められます。そのため、日本歯周病学会では専門医制度が設けられ、重度の歯周病にも対応できる歯周病専門医の育成が行われています。
一方、インターネット上には「1日で治る歯周病」「レーザーで重度歯周病が完治」「薬で治る歯周病」など、科学的根拠の十分でない情報も散見されます。
日本歯周病学会では、こうした民間療法的な治療法についてポジションペーパー(学会声明)として公式見解を示しています。治療を検討される際は、信頼できる情報源を参考にされることをおすすめします。
a-PDT(抗菌的光線力学療法)とは?
a-PDT(antimicrobial Photodynamic Therapy)は、光と光感受性物質を用いて細菌を不活性化させる手法で、歯周病治療への応用が試みられてきました。テレビ番組などで取り上げられ話題になることもあり、関心の高い治療法の一つです。
2012年2月3日の院内勉強会では、歯周病への a-PDT の臨床応用に関する論文を抄読し、その内容を整理しました。
毎週金曜日には、American Board of Periodontology 認定医である西堀雅一先生による院内勉強会に参加し、最新の歯周病学について学んでいます。
Interdisciplinary Study Club Tokyo(西堀歯科勉強会)
a-PDT の臨床効果を検証した研究
Clinical effectiveness of photodynamic therapy in the treatment of periodontitis. (J Clin Periodontol 2009)
この研究では、次の2群を比較して a-PDT の効果が評価されていました。
- スケーリング・ルートプレーニング(SRP)のみ
- SRP + a-PDT 併用
その結果、a-PDT は特定の細菌に対してのみ効果が認められる一方、総合的な除菌効果は従来のSRPと大きな差がないと報告されています。
つまり、基本治療である SRP を適切に行うことが最も重要であり、SRP が不十分な場合は、a-PDT を併用しても改善が得られない可能性が示されています。
a-PDT の総合的評価(システマティックレビュー)
The Effect of Photodynamic Therapy for Periodontitis. A Systematic Review and Meta-Analysis (JOP 2010)
過去の a-PDT 研究をまとめたレビューでは、以下の点が指摘されていました。
- メーカー主導研究によるバイアスの可能性
- サンプル数の少なさ
- 観察期間の短さ
- 有効性・安全性の検証が十分ではない点
これらから、現時点ではa-PDT が従来の歯周基本治療(SRP)を上回る明確なエビデンスはないとまとめられています。
治療方針は患者さんごとの状態により異なるため、まずは正確な診査・診断の上で適切な治療を選択することが重要です。
歯周病治療は「誰が行うか」で結果が変わる
歯周病は、生活習慣や全身疾患とも関連がある複雑な病気であり、世界中でさまざまな治療法が研究されています。しかし、現在のところ、
歯周病専門医が行う従来の治療を超える確立した治療法は存在していない
というのが科学的な位置づけです。
特に、根拠の乏しい民間療法に依存すると、かえって進行してしまい、治療期間や費用が増えてしまう場合もあります。信頼できる情報にもとづき、適切な専門治療を受けることが大切です。
自由が丘・田川歯科医院より
目黒区・世田谷区・大田区、東横線・大井町線・田園都市線沿線で歯周病治療をご検討中の方は、自由が丘駅から徒歩3分の歯周病専門医までお気軽にご相談ください。



