自由が丘の歯医者コラム

マイクロスコープを使うと歯科治療は何が変わる?12年間使い続けて感じる「見えること」のメリット

マイクロスコープとは、治療する部分を拡大して見るための歯科用の顕微鏡です。「細かいところまで見えるので、精密な治療ができる」という説明をよく見かけますが、私が2014年から臨床で使い続けて感じている違いは、少し別のところにあります。それは、見えることで、治療中の判断が変わるということです。

「見る→判断する→処置する→確認する」を拡大視野で行う

歯科治療は、器具を動かすだけの作業ではありません。状態を見て判断し、その判断に応じて次の操作を決めることの連続です。もちろん、マイクロスコープがなくても歯科治療はできます。ただ、口の中には、歯の細かな溝、歯と歯の境目、詰め物と歯の境目など、肉眼では確認しにくい場所がたくさんあります。マイクロスコープは、拡大と強い光によって、こうした場所の確認を助けてくれます。

むし歯を治療するときの私の流れは、次のとおりです。

まず、むし歯の場所を確認し、今治療するべきかを確認します(患者さんと一緒に見ることもあります)。さらに処置が必要と判断すれば、追加で処置します。

詰め物をするときも同じで、必要な場所に材料が入っているか、余分な材料が残っていないかを拡大して確認します。

この「見て、判断して、確認する」という繰り返しを拡大視野で行えることが、私にとってマイクロスコープを使う意味です。実際に、治療中の迷いや無駄な操作、患者さんへの説明にかかる時間は、ルーペや直視で治療していた頃より少なくなったと感じています。

マイクロスコープを使うと、治療時間は長くなるのか

拡大して細かく処置するぶん、時間をかけた方がよい治療もあります。一方で、確認のために何度も器具を動かす必要が減り、直視より効率的に進められる場面もありません。

マイクロスコープでできないこと

すべてのむし歯が見つかるわけではありません。取り残しが絶対になくなるわけでもありません。診断には、視診に加えて、レントゲン検査、症状、歯の状態などを総合する必要があります。

歯を削る量が必ず少なくなるわけでも、治療が必ず早くなるわけでもありません。「きれいに削る」ことよりも、必要な処置を適切に行い、その結果を確認することが大切だと考えています。

倍率を上げるほど、視野は狭くなります。器具の操作には、より慎重さが求められます(機種選びの経緯は導入レポートで書いています)。

機材の使用そのものが治療結果を良くするという、明確なエビデンスは現時点では確立されていません。結果は、機材の有無よりも、扱う歯科医師の知識・技術・経験による個人差の影響を受けます。マイクロスコープは「見える」ための機材であり、良い結果を保証するものではありません。

そのため、マイクロスコープが「あるかどうか」だけでなく、実際の診療でどのように使われているかが大切だと考えています。

当院では、保険診療でも毎回使用しています

当院では2014年、自費診療ほ保険診療を問わず、すべての治療で毎回使用しています。特別な治療のための踭備ではなく、日々の治療を「見える状態」で行うための道具だからです。保険診療との関係は、Q&Aで詳しくお答えしています。

まとめ|「見えること」は、歯科治療の判断を変える

マイクロスコープの意味は、大きく見えること自体より、見ながら判断し、処置の結果を確認できることにあります。治療が必ず早くなる、削る量が必ず減る、結果が必ず良くなる、というものではありません。大切なのは、機材の有無よりも、どう使われているかです。

(関連記事:マイクロスコープを使った精密な歯科治療とは?/マイクロスコープ歯科治療についてよくあるご質問)