自由が丘の歯医者ブログ

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NHKで放送「インプラント 急増するトラブル」専門医が感じた重要ポイント2012.01.29

先日、NHK「クローズアップ現代」で 歯科インプラント治療のトラブル急増 が特集されていました。

NHK クローズアップ現代|歯科インプラント トラブル急増の理由

番組では、インプラント治療の背景にある問題点や、トラブルが生じやすい構造的な要因がわかりやすくまとめられていました。

NHKが報じたインプラントトラブルのイメージ画像

番組の報告によると、インプラント治療は民事契約で行われるため行政が介入しにくく、トラブルを抱えた患者さんは国民生活センターへ相談するケースが増加。その相談件数は過去5年間で約2000件に上るとのことでした。

NHK記者による調査では、歯科医師の供給過剰や競争激化により、ホームページなどの広告媒体で安易にインプラントを勧めるケースが増え、十分な経験を積んでいないまま治療に取り組む歯科医師がいるのではないか──という問題提起がされていました。

この状況を受け、日本口腔インプラント学会も治療ガイドライン策定を進めていると紹介されていました。

放送の中で、日本でオッセオインテグレーション型インプラントの普及に大きく貢献された小宮山先生が次のように述べられていました。

「術前診査をしっかり行うと、インプラント治療が適切に行える患者さんは決して多くはない。起こり得る合併症やデメリットを丁寧に説明し、最終判断は患者さんに委ねている。」

このお話には私自身も深く共感しました。実際、インプラント治療の適応は、残存骨量・歯周病の程度・金属アレルギー・全身疾患・噛み合わせ・生活習慣など、非常に多くの要素によって左右されます。

また、歯科医側の診断精度、施術能力、骨造成技術、使用する材料・インプラントシステムの選択なども長期予後に大きく影響します。インプラントは顎骨に埋め込まれるため、長い年月の中で様々な因子の影響を受けやすい治療です。

つまり、インプラントは天然歯とはまったく異なる存在であり、言葉の響きに惑わされず「implant=人工的に挿入するもの」であることを改めて理解する必要があります。

そして、インプラントを必要とする方は、もともと口腔内環境に課題を抱えている場合が多いため、より一層慎重な判断と計画が求められます。

今回のNHKの放送を視聴して改めて感じたのは、現在インプラント治療を検討されている方、そしてインプラント治療を導入しようとしている歯科医師の双方が、十分に情報を理解し慎重に判断することの重要性です。

インプラント治療は適切な診断と計画、そして丁寧な説明を通じて初めて、患者さんにとって納得できる選択肢となるものだと感じています。