自由が丘の歯医者ブログ

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信頼できる歯医者の見分け方|症例から学ぶ誠実な治療姿勢とは2011.12.10

診療所の移転に伴い更新が滞っていましたが、引き続き勉強会の内容を記録していきたいと思います。

毎週金曜日は、American Board of PeriodontologyのMemberである西堀 雅一先生の院内勉強会に参加しています。

Interdisciplinary Study Club Tokyo(西堀歯科勉強会)はこちら


■ 今回のプレゼンテーション

2011年10月28日(金)は、さいたま市南区で開業されている 小林成人(なると)先生による症例発表でした。

Naruto Dental

今回の症例は、広範囲に進行した中等度〜重度の歯周病(歯槽膿漏)により、咬める歯を失ってしまった患者さんへの治療計画とその結果に関するものでした。


■ 症例の概要

患者さんは痛みに非常に弱い男性で、強くインプラント治療を希望されていました。しかし、インプラント手術は術後痛を誘発しやすいため、なると先生は可能な限り治療回数を減らし、負担を少なくする方法を慎重に検討されたそうです。

上顎の歯は動揺が著しく保存不可能でしたが、下顎の歯に関しては、歯磨き習慣の改善と禁煙指導を徹底することで、歯槽膿漏が大きく改善しました。 患者さん自身の努力と、それを引き出す指導力が見事に反映された結果でした。


■ 上顎は抜歯後に高度な義歯・インプラント治療へ

上顎は全て抜歯し、まずは総義歯で生活していただく必要がありました。通常、自分の歯で噛んでいた方にいきなり総入れ歯を受け入れていただくのは困難です。

しかし、なると先生は東京医科歯科大学・高齢者歯科学講座で小林賢治先生から義歯作製の技術を学ばれており、患者さんが不快にならないよう、きわめて丁寧に義歯治療を進めておられました。

高度なインプラント治療を行う歯科医は、義歯(入れ歯)治療にも精通していなければならない。 このことを改めて強く再認識しました。


■ 骨が少ない患者さんへの非切開インプラント手術

歯を抜いて4ヶ月後、CTスキャンを撮影し、CAD/CAMを用いた精密なシミュレーションを行いました。

重度歯周病に罹患した患者さんの顎の骨は薄く、十分なインプラント埋入には本来骨造成が必要です。しかし、骨造成は患者さんに大きな負担や痛みが伴うため、なると先生は非切開手術で負担を最小限に抑えるという方向性を選択されました。

2週間にわたりシミュレーションを重ねた結果、計画通り7本のインプラントが埋入され、その後の固定式インプラント義歯も極めて高い精度で完成させておられました。


■ 西堀歯科勉強会で重視している3つの視点

  1. 選択した治療法に科学的根拠(エビデンス)が存在するか?
  2. 長期的に良好な予後が見込める治療計画になっているか?
  3. 患者さんにとって最善となる医療を提供できているか?

この3点を軸に、すべての症例を厳密に検証しています。

「患者さんにとって最良の治療=われわれにとって最善の治療」 これこそが臨床の原則であり、私たちが最も大切にしている価値観です。


■ 誠実に患者さんと向き合うということ

難易度の高い症例ほど、検討すべき要素は無数にありますし、技術的にも高いレベルが要求されます。しかし、なると先生はその大変さを微塵も感じさせず、むしろ楽しみながら治療に臨まれているようでした。

その姿勢から、「誠実な医療」とは何かをあらためて深く考えさせられました。

私もなると先生のように、患者さん一人ひとりに誠実に向き合いながら、日々の臨床をより良いものにしていきたいと強く感じた一日でした。