自由が丘の歯医者ブログ

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インプラント周囲炎はなぜ起こる?治療の選び方と予防の視点から考える2013.12.24

私がインプラント治療を始めた1990年代初頭、インプラント治療は外科・補綴・歯周治療に精通した歯科医師が行うべき高度先進医療として位置づけられていました。

しかし現在では、技術の進歩と普及により、幅広い分野の先生方がインプラント治療に携わるようになっています。その一方で、インプラント周囲炎の相談を受ける機会も増えています。

昨年8月のブログでも触れましたが、インプラント周囲炎には多くの原因があり、その中には術者の知識不足・配慮不足・技術的要因によって生じるケースも含まれています。そのため、インプラント治療に携わる歯科医師は、常に知識と技術のアップデートが欠かせません。

私は毎週金曜日に、American Board of PeriodontologyのMemberである西堀 雅一先生の院内勉強会に参加し、最新の知見を学ばせていただいています。

Interdisciplinary Study Club Tokyo(西堀歯科勉強会)はこちら

2013年10月25日の会では、東中野でご開業されている歯周病専門医篠田先生による「インプラント周囲炎の7年経過症例」のプレゼンテーションが行われました。

インプラント周囲炎 7年経過症例のスライド資料

(篠田先生のスライドより引用)

1998年にインプラント治療を受けた患者さんが、周囲の腫れと痛みを訴えて2006年に受診されたケースが紹介されました。当時はインプラント周囲炎に関する情報が少なく、LangらのCIST(Cumulative Interceptive Supportive Therapy)のみがエビデンスとして知られていた時代です。

篠田先生もCISTに基づいて治療を進められましたが、炎症は思ったように改善せず、非常にご苦労されたとのことでした。

インプラント周囲炎が治りにくかった理由(篠田先生の考察)

  1. インプラント体の表面が極めて粗かったこと
  2. 患者さんがもともと歯周病をお持ちだったこと
  3. 定期的な歯科健診を受けていなかったこと
  4. 抗がん剤治療の影響があったこと

これらの要因を踏まえた上で、篠田先生は、

  • インプラント治療前の歯周炎の徹底したコントロール
  • Moderately rough(適度に粗い)表面のインプラントの選択
  • 定期的なSPT(Supportive Periodontal Therapy/歯周病安定期治療)

これらを行うことで、インプラント周囲炎は予防できた可能性があるとまとめられていました。

日本臨床歯周病学会によるインプラント周囲炎予防ガイドライン

(篠田先生のスライドより引用)

インプラント周囲炎は「必ず起きるもの」ではない

会のディスカッションでは、インプラント周囲炎はすべての患者さんに起きるわけではなく、

  • インプラント体の表面性状(粗さ)
  • 埋入位置や深さ、骨幅への配慮
  • 清掃性を考えた補綴デザイン

など、インプラントの選択から設計、埋入の技術、メンテナンス体制まで、複数の要因が重なって発症する可能性があることが再確認されました。

篠田先生、日々の臨床に直結する貴重な考察をありがとうございました。

インプラント周囲の腫れ・痛みでお悩みの方へ

目黒区・世田谷区・大田区、東横線・大井町線・田園都市線沿線にお住まいの方で、

「インプラントの周りが腫れる」「痛い」「メンテナンスで改善しない」

といった症状がある場合は、自由が丘駅から徒歩3分の歯周病専門医までお気軽にご相談ください。適切な診査・診断のもと、今後の治療方針を一緒に考えていきましょう。