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歯周病治療における骨再生の比較研究(後編) ― 治療結果に影響する「患者要因」と適応基準について ―2011.07.17

進行した歯周病(歯槽膿漏)に対して行う歯槽骨再生治療は、すべての症例で同じ結果が得られるわけではありません。適切な診断と症例選択が不可欠であり、治療前段階で「適応かどうか」を慎重に見極める必要があります。

2011年7月15日(金)は、歯根分岐部病変に関する論文抄読会で、私が論文要約を担当しました。

歯槽骨再生治療のイメージ

毎週金曜日に参加している、American Board of Periodontology(米国歯周病専門医) の Member である西堀雅一先生の院内勉強会にて発表した内容です。

Interdisciplinary Study Club Tokyo(西堀歯科勉強会)

A randomized clinical trial comparing enamel matrix derivative and membrane treatment of buccal class II furcation involvement in mandibular molars. Part III: patient factors and treatment outcome.(J Clin Periodontol 2006)

Enamel matrix derivative proteins for the treatment of proximal class II furcation involvements: a prospective 24-month randomized clinical trial.(J Clin Periodontol 2010)

■ 研究テーマ:進行した歯周病の骨再生治療における「患者要因」

今回の論文は、歯周病が進行し奥歯の分岐部(歯の根が分かれる部分)に骨欠損が生じた症例に対して、再生治療の結果にはどのような患者要因が影響するか を評価した研究です。

調査対象となったのは、ドイツ・ボン大学歯周病科の研究グループによる一連の臨床試験で、前編で紹介した研究(Jepsen et al. 2004/Meyle et al. 2004)の続編にあたります。

■ 主な結果(専門医としての要点)

研究では、患者の年齢・喫煙の有無・性別・口腔衛生状態など、複数の因子が検討されました。結果として、これらの条件にばらつきがあるグループにおいても、

EMD(エナメルマトリックスデリバティブ)を用いた再生療法は、GTR法と比較して良好な傾向が見られた

ことが示されました。

ただし、この研究は症例選択と術後管理が非常に厳密であり、一般化するには慎重な解釈が必要です。むしろ、研究が示したのは「EMDの優位性」ではなく、

再生治療を行うための各種条件(適応基準)を明確にできる内容であった

という点にあると感じました。

■ 勉強会座長である西堀先生のコメント

「歯周病に対する骨再生治療は、今現在も完全に確立された方法があるわけではありません。材料もテクニックも多く報告されているが、確実性の高いものはまだ少ない。だからこそ再生治療を選択する際は、利点・限界・起こり得る変化を丁寧に伝え、患者さんと術者の双方が納得して進めることが大切である。」

専門医として、私もまったく同感です。

■ ご相談をお考えの方へ

目黒区・世田谷区・大田区、東横線/大井町線/田園都市線沿線にお住まいで歯周病治療に不安がある方は、自由が丘駅から徒歩3分の歯周病専門医までお気軽にご相談ください。治療の可否を含め、現在の状態に適した選択肢をご説明いたします。

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