重度の歯周病(歯槽膿漏)では、失われた歯槽骨の再生をどのように図るかも重要なテーマになります。歯周病専門医は、患者さんの状況に応じて様々な再生療法を比較検討し、適切な治療計画を立てる必要があります。
2011年7月1日(金)は、歯根分岐部病変に関する再生治療の論文をテーマとした抄読会が行われました。

毎週金曜日は、American Board of Periodontology のMemberである西堀雅一先生が主宰する院内勉強会に参加しています。
Interdisciplinary Study Club Tokyo 西堀歯科勉強会
今回取り上げた論文
A randomized clinical trial comparing enamel matrix derivative and membrane treatment of buccal Class II furcation involvement in mandibular molars. Part I. (J Periodontol 2004)
A randomized clinical trial comparing enamel matrix derivative and membrane treatment of buccal Class II furcation involvement in mandibular molars. Part II. (J Periodontol 2004)
これらはドイツ・ボン大学歯周病科による4部作のうちの2本で、下顎臼歯の分岐部病変(Class II)に対して、以下2種類の再生療法を比較した多施設共同研究です。
- EMD法: エナメルマトリックスデリバティブ(再生タンパク質)を用いた方法
- GTR法: 特殊な膜を使用して再生環境を整える方法(ガイド付き組織再生法)
■ 研究デザイン
同一患者の左右の歯をそれぞれ異なる治療法で処置する「スプリットマウス法」が採用され、条件を揃えたうえで臨床結果が比較されました。
■ 主な結果(論文の報告)
論文では、両治療法とも臨床的な改善がみられたと報告されています。特に、以下の点が結果として挙げられていました。
- 水平的な骨欠損において、EMD法で良好な改善がみられた傾向があった。
- GTR法では、術後に歯肉退縮がみられた症例があったと報告されている。
- 術後の痛みや腫れがなかった割合は、EMD法62%、GTR法44%と示された。
これらはあくまで「その研究で得られた結果」であり、すべての症例に同じ結果が当てはまるわけではありませんが、治療選択の参考となる貴重な臨床データです。
■ 本論文の特徴
多施設で行われ、欠損部の診査方法や治療プロトコルが明確に統一されている点が特徴的で、研究デザインの精度が高いと評価されています。分岐部病変の治療は難易度が高いため、このような比較研究は治療選択の理解に役立ちます。
■ 骨再生治療に関して専門的に伝えられること
骨再生治療は高度な歯周治療に分類され、全ての症例で適応できるわけではありません。患者さんごとに歯周組織の状態・生活習慣・治療後管理など多くの要素を検討する必要があります。
適切な診査・診断のもとで治療計画が立てられた場合には、論文のような改善が期待できることも報告されています。



