歯周病専門医は、患者さんの現在の歯周組織の状態から将来のリスクを評価し、日頃から治療後の経過を見据えた治療計画を立案します。本記事では、ISCT勉強会で取り上げられた論文をもとに、歯周病治療後の経過に影響する要因について紹介します。
2011年6月17日(金)は、歯周病治療の治療後経過(Prognosis)に関連する要因についてまとめられた論文を読み、ディスカッションを行いました。
毎週金曜日は、American Board of Periodontology のMemberである西堀雅一先生が主宰する院内勉強会に参加しています。
Interdisciplinary Study Club Tokyo 西堀歯科勉強会
参考とした論文
Tooth loss after active periodontal therapy. 2: tooth-related factors(JCP 2008)
これら2本の論文は、ドイツ・フランクフルトの Johann Wolfgang Goethe-University による回顧研究で、歯周病治療後の患者さん・歯の状態を10年後に評価した内容です。
1. 患者さん側の要因と歯の保存への影響
1本目の論文では、100名の患者さんを対象とし、治療後に歯を失った方の特徴が調査されました。結果として、以下の項目が関連していたと報告されています。
- 不良な歯磨き習慣
- 不定期なメインテナンス受診
- 遺伝的背景
- 年齢・性別
- 喫煙
- 治療前の歯周病の重症度(予後診断)
特に、歯磨き習慣とメインテナンス受診の有無が強く関連していたとされており、論文内では定期的なクリーニングや専門的ケアの重要性が強調されています。
2. 歯の状態が治療後の経過に与える影響
2本目の論文では、失われた歯の「治療前の状態」に焦点を当てて分析されました。関連していた要因には、次のような項目が挙げられています。
- 術前の骨吸収量
- 根分岐部病変の有無
- ブリッジの支台歯であったかどうか
興味深い点として、術前に骨喪失があった歯でも93%が定期的なクリーニングによって歯の喪失を防げていたという報告がありました。この結果は、治療後の継続的メインテナンスの重要性を示すものと考えられます。
3. 専門的な視点から伝えられること
歯周病(歯槽膿漏)は、心疾患・脳血管疾患・糖尿病・低体重児出産など、全身との関連も報告されている疾患です。中等度以上の歯周病と診断された方は、一度歯周病専門医への相談を検討してみるのも良いかもしれません。



