American Academy of Periodontology(米国歯周病学会:AAP)は、 歯周病治療に関するガイドラインや声明を定期的に発表しています。 今回は、1990年代以降議論が続く 「レーザーを用いた歯周病治療」 について、 AAPが公表した最新の公式声明を紹介します。
■ 対象となった3つの非外科的処置
レーザーを用いる以下の処置に対して、根拠に基づく評価が示されています。
- 歯肉溝・歯周ポケット内のデブライドメント(汚染組織の除去)
- 歯肉縁下細菌の除去
- スケーリング・ルートプレーニング(SRP)の補助的使用
■ 声明の主なポイント
1. デブライドメントにおける効果の証拠は限定的
レーザー単独、またはSRPとの併用いずれにおいても、 現時点の研究では高い有効性を示す十分な根拠は得られていません。
2. 歯肉縁下細菌の除去はSRP単独で達成される
レーザー照射による細菌減少効果を支持する研究結果にはばらつきがあり、 一貫した予知性は確認されていません。
3. Er:YAGレーザーは歯根表面への影響に注意が必要
硬組織に作用するレーザーであるため、 照射コントロールが難しく歯根表面に変化が生じる可能性が指摘されています。
■ AAPの総括と今後の方向性
現時点で、レーザーの歯周病治療への応用による明確な治療効果は確立していない と結論づけられています。
また、レーザー使用を積極的に推奨できるほどの根拠は現状では不十分であり、 今後の研究によるさらなる検証が必要だとされています。
日本においても、レーザー治療を含む歯周病治療の選択にあたっては、 患者さんの状態や目的に応じ、適切な説明と慎重な判断が求められます。
● AAP原文(英文): 米国歯周病学会のレーザー治療に関する公式声明



