自由が丘の歯周病専門医・指導医が、中立的な立場で公表情報をわかりやすく整理します。
こんにちは。
自由が丘 田川歯科の歯周病専門医です。
約10年ほど前、「抗真菌薬でうがいをすると歯周病が治る」という報道が大きな話題になりました。 当時、多くの患者さんからお問い合わせをいただいたことを覚えています。
しかし、すぐに日本歯周病学会から公式の見解が発表され、 報道内容の正確性について学会としての立場が示されました。 この記事では、学会見解をもとに中立的に情報を整理してお伝えします。
日本歯周病学会の見解(要点の紹介)
学会が公表した内容の要約・引用は以下の通りです。
「抗真菌剤が通常の歯周病治療に利用できるという科学的根拠は現時点ではない。」
仮に有効性が示された薬剤であっても、副作用や薬効の特性をふまえ、 適切な場面・方法で判断されるべきである。
現行の歯周病治療のガイドラインは、 歯肉縁上・縁下のプラークを除去し、歯周組織の改善を図るという 世界的に確立された治療手順に基づいている。
つまり、当時の学会は 「抗真菌薬を用いたうがい療法で歯周病が治るという根拠は不十分」 という立場を明確に示していました。
科学的根拠に基づく歯周病治療とは?
医療分野では、科学的根拠(エビデンス)に基づく治療が推奨されています。 これは、適切な研究デザインでバイアスを排除し、 検証された結果に基づいて治療法が選択されるという考え方です。
歯周病は typically、複数の細菌が関与する感染症であり、 例えば Porphyromonas gingivalis や Tannerella forsythia など、 いわゆる「レッドコンプレックス」と呼ばれる細菌群が深く関連しています。
そのため、特定の菌(例:カンジダ菌)だけが原因という解釈は 現在の科学的知見とは一致しません。
現在推奨される歯周病治療の流れ
現在、世界的に標準となっている歯周病治療は以下の流れです。
- 歯肉縁上のプラーク(汚れ)をブラッシング等で除去
- 歯肉縁下に存在する歯周病原性細菌を各種処置により除去
- 必要に応じて歯周組織の修復・再生を図る
これは、世界中で積み重ねられた研究に基づく 科学的根拠のある治療手順です。
この標準的治療を行わずに、 安全性や有効性が確認されていない投薬を行うことは推奨されない --これが当時の日本歯周病学会の公式な立場でした。
まとめ -- 新しい治療情報との向き合い方
医療分野では、新しい研究成果や治療法が話題になることがありますが、 十分な臨床研究が蓄積されるまでは慎重な判断が必要です。
信頼できる学術団体(学会)や公的機関が発信する情報を参考にすることで、 誤解を避け、より安全に治療選択ができるようになります。
詳細は下記リンクの日本歯周病学会のポジションペーパーをご覧ください。



