2011年3月17日(San Diego, California)に開催された International Association of Dental Research(IADR)第89回総会 では、 歯周病治療に関する国際的な調査報告が行われました。
米国では、大学の研究成果と一般歯科臨床の情報格差を縮める目的で、 国立機関による研究・臨床ネットワークが構築されています。 今回紹介された調査は、重度歯周病の治療方針 について、 平均開業年数23年の歯科医師132名が Web 調査に回答したものです。

■ 調査から見えた「重度歯周病の治療方針のばらつき」
調査の結果、診断内容には大きな差は見られなかった 一方で、 重度歯周病に対する治療方針にはさまざまな選択があることが示されました。
- 34%:抗生物質の内服による対応
- 42%:抗生物質の局所投与
- 32%:一定期間の経過観察
このような治療選択の幅が確認されたことは、歯周病治療の意思決定が、 患者さんの症状・背景・リスクなど多くの要因によって変化することを示しています。
■ 治療選択の背景 ― 専門医治療の必要性に関する認識
調査では、一般歯科医も 「重度歯周病では専門的な治療が望ましい場合がある」 と考えているという回答が得られた一方で、 実際の臨床ではまず自院で初期対応を行い、短期的に経過を観察するケースが多いことも示されました。
調査を担当した Dr. Aaron Rosen(NY・Rochester)は、 治療選択の多様性が存在する現状を踏まえ、 歯周病治療のガイドライン整備の重要性 を指摘しています。
■ 国際的な傾向と日本の歯周病治療について
歯周病は科学的根拠の蓄積が進んでいる分野ですが、 患者さんの状態やリスク因子が個別に異なるため、 治療方法やアプローチに幅が出ることがあります。
日本でも同様に、患者さんの状況に応じて適切な治療を選択していくことが大切であり、 重度歯周病の場合には、歯周病専門医による精密検査や治療が推奨されることがある とされています。
今回の国際調査は、「治療法の善し悪し」を比較するものではなく、 臨床現場における治療選択の現状を紹介する学術的報告です。
● 引用元:IADR 89th General Session and Exhibition / Medscape Medical News



