自由が丘の歯医者ブログ

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医療広告の表現を考える2010.10.23

http://www.jaam.or.jp/

美容医療に関わる広告は以前から眼に余るものがあり、平成6年、当協会において「美容医療に関わる広告、記事等における自主規制コード」を作成し、これが厚生省(当時)を通して全国の都道府県に周知されました。しかしこれはあくまでも自主規制コードであり罰則もないため、一時的に沈静化した美容医療広告は以前にも増してエスカレートし、これに伴って医療法違反広告が氾濫し、患者さんの被害も増加したそうです。

平成19年4月、医療広告に関わる医療法が大幅に改正され、同時に「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項等及び広告適正化のための指導等に関する指針(通称、医療広告ガイドライン)」が、各都道府県知事に通知されました

改正の要旨は、下記の3点です。

  • 医療広告の定義が明確にされた。
  • 表示可能な文言が拡大された。
  • 違反広告に対する罰則が明確にされた。

医療広告に表示できる文言については従来と同じくポジティブリスト方式で表示できる表現を規定しており、従ってこれら以外は全て表示不可ということです。今回の改正ではこのポジティブリストがかなり具体的に提示されました。

更に具体的な文言における表示の可否について、日本美容医療協会は厚生労働省医政局総務課の担当専門官と約1年に渡り協議を重ねて参りました。医療法第6条と医療広告ガイドラインについて日本美容外科学会報に掲載された特別寄稿、および厚生労働省との協議内容については本ホームページに掲載されていますのでご参照下さい

美容医療においては、一般の医療に比べいわゆる口コミが少ないため、患者さんがこれらのクリニックを受診する際には、とりあえずは広告ないしはホームページを頼りに探すしかありません。しかし最近は、雑誌や新聞、フリーペーパー等の紙媒体による医療広告が医療法で厳しく規制されているため、ホームページなどのIT媒体を用いた広告がいっそうの激しさを増しています。ホームページは今回の広告規制の対象外ですので、患者さんはこれらの内容についても厳しい眼を持ってその真偽を判断する必要があります。

広告に表示することが禁止されている表現

以下に参考として、日本美容外科学会報から美容医療広告に表示することが禁止されている表現を転載します。逆に考えれば、このような表現を用いているクリニックはコンプライアンス(法令遵守)精神に欠けており、最初から選択をしない方が安全であると言えるでしょう。

  1. 他の病院又は医療機関と比較して優良である旨の比較広告は表示不可:
    例えば「日本一」「No.1」「一番」「最高」「絶対」等の表現は、客観的な事実であっても表示できない。
  2. 永久保証」という表示も掲載不可。
  3. 誇大広告:必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現したり、人を誤認させる広告は禁止される。特に治療費に関しては注意を要する。
  4. ○○○学会会員などとして学会名を表示することは掲載不可。学会は勝手に作れるからという理由。
  5. 一般的でない肩書きも掲載不可。
  6. キャンペーン価格等は掲載不可。
  7. 適応とした医療機器が薬事の承認を得ていない医療機器を使用した治療行為は掲載不可。
  8. 客観的な事実であることを証明することができない内容の広告:患者や医療従事者の主観によるものや客観的な事実であることを証明できない事項、エビデンスのない事項については表示不可。勿論、モニター患者による体験談も掲載できない。
  9. 公序良俗に反する内容の広告:わいせつ若しくは残虐な写真・映像又は差別を助長する表現、また不安をあおる表示も不可。
  10. 治療効果は表示ができない(個々の患者によって治療効果が異なるため)。
  11. 写真は、治療効果が一定でないので、治療効果を暗示させるようなものは掲載不可。その意味からも術前・術後の比較写真は掲載不可。
  12. ○○○相談所、○○○研究所、○○○センターなどは、例えばがんセンター等のように公に認められたもの以外は表示不可。
  13. 書籍などの出版物やDVD の提供に名を借りた疑似医療広告は勿論、掲載不可。

美容医療広告の見分け方

これら以外にも、悪質な医療法違反広告にはいくつかのパターンがあります。

「→」以降は今回の法改正により明確にされたものです。患者さんが美容医療施設を選ぶ際に参考となる、美容医療広告の見分け方についての注意点を下記に挙げます。

  • あまり派手な広告を出している医療施設。→概して注意した方が安全です。
  • 患者さんを集めるため広告には治療費を安く書いてあるが、実際に受診するといろいろなオプションを勧められて高い料金設定をされる。→広告には実際に窓口で支払う目安の料金を明示しなければなりません。
  • 手術料は10万円?といった記載がされており、実際に窓口で支払う金額が不明瞭である。→同上。
  • フェイスリフトなど高度の技術を要する治療法が書き並べてあるが、実際には技術が伴わない。→これはなかなか判断が難しいです。できれば過去の症例数を聞くか、モニター患者さんの症例写真を見せてもらいましょう(これも確実ではありませんが)。
  • 症例写真が掲載されているが、パソコンで改ざんされている。→これもデジタルデータは簡単に操作でき、改ざんを見破ることは難しいです。もしも改ざんされた写真が掲載されている場合は虚偽記載であり、極めて悪質と判断されます。またそもそも広告には術前・術後の比較写真は表示できません。
  • 安全性が確認されていない医療機器を用いた治療(レーザー治療など)、埋入物(豊胸術用の人工乳房など)、注入物(フィラーといわれるコラーゲンやヒアルロン酸など)などを用いて、あたかも最先端の医療技術であるが如く記載されている。→厚生労働省から薬事で承認された治療法しか表示できません。
  • ○○式といった術式があたかも自分にしかできないような術式として、または全くオリジナリティーのないどこでもやっている術式を、あたかも自分が考案した術式であるが如く記載している。→基本的には――式といった記載は、医学界で広く認められている術式以外は禁止されています。
  • あたかも夢が実現するような、魅力的表現が書かれている。→結果を保証するような記載はできません。
  • レーザー治療や光治療等で、外国人の症例写真しか掲載されていない。→レーザーや光治療を用いた皮膚美容は、西洋人と東洋人では結果が大きく異なることがあります。
  • 実際の治療とは関係のないモデルの写真を掲載して錯覚させる、またはプロダクション御用達等の文言を用いて、患者さんを誘導する。→そもそもこれらの表示は禁止されています。
  • 専門医、認定医等の表示がある。→現時点においては、美容外科も美容皮膚科も広告に表示できる専門医としては認められていません。美容医療に関係のある学会の専門医で、厚生労働大臣から広告に表示することが認められているものは、日本形成外科学会認定の「形成外科専門医」、日本皮膚科学会認定の「皮膚科専門医」、日本レーザー医学会認定の「レーザー専門医」くらいです。
  • 期間限定のキャンペーン→キャンペーン広告は禁止です。
  • エステ感覚やプチ整形といった、安易に手術を受けさせるための表示が記載されている。→安易に誘導するような表示自体が禁止事項です。

具体的な違法表示

ちなみに最近の雑誌、単行本、タウン誌、フリーペーパー等の違反広告には、下記のような具体的な違法表示が見受けられます。

  1. 顔面:小顔VFR法、小顔形成術、ファイバースコープによる入・通院不要なフェイスリフト、トータルフェイスリフト、吸収糸による弛み・シワ治療、金の糸、最新のシワ取りプチ整形アクアミド注入、ヒアルエイド、最新のシワ予防ボトックス、成長細胞(血小板)注入、PRP皮膚再生、分離・分層脂肪 注入、自己コラーゲン・幹細胞注入、自己コラーゲン・成長因子による肌再生、成長因子を用いた発毛(HARG法)、最新の光照射によるリフトアップ、最新のレーザー治療、スーパーフォトセラピー、スーパーRF、ニキビフォトニューマティックPPX
  2. 眼部:クイック法・スーパークイック法
  3. 乳房:バストアップ、MENTOR Silicone、McGhan Silicone、メスを使わない脂肪注入豊胸術、最新の注射だけでバストアップ、グラマーバスト、スーパーナチュラルバッグ、マンマリーヒアル、ヒアルロン酸でのバストアップ
  4. 躯幹:炭酸ガス注入法、注射で痩せる、メソセラピーダイエット(脂肪溶解注射)、ノーニードルメソセラピー
  5. 性器:シリコンボール挿入術、陰茎増大術、陰茎長茎術、亀頭増大術、小陰唇形成術、小陰唇縮小術、膣縮小術
  6. 薬事で承認を得ていない医薬品・医療機器を用いた治療法、医療機器の商品名や個人名を使用した治療法:スーパーヒアルロン酸(ピュラジェン)、フォトフェイシャル、カーボメッド、ウルトラシェープ、フラクセル、サーマクール、スターラックス、エンダモロジー、カンタースレッドリフト、ロシアンリフト、金の糸リフト、ビーナスリフト、メソリフト(ヒアルロン酸注入法)、サージダーム(ヒアルロン酸)、イソダーム、オバジ、クロモナイト光線治療、血小板を用いた若返り法
  7. その他:プチ整形、プチリポ、?式美容整形(形成)術、メスを使わない美容整形、包帯はもういらない、さり気なくナチュラルに、大量の脂肪注入が可能になりました、オートファイバー法(脂肪注入法)患者を呼び込むための低価格(患者が実際に会計で支払う金額の目安を記載する必要あり)

最終的には医療施設の選択は自己責任ですが、広告については以上のような事項に注意して選ぶ必要があります。

普段よく目にする広告内容が違反でした。

医療倫理を含めた基本ルールを守る先生は治療ルーティンもしっかりしているのかなと勝手に思ってます。