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正しい歯科診療とは?Evidence-Based Dentistry(EBM)の基本と実践方法|Part32010.09.24

本記事では、膨大な論文情報の中から「患者の望む治療結果に直結するエビデンス」をどのように選択すべきか、EBMの基本となる論文の読み方を中心に解説します。

いかにして論文を読めば良いのか?

PubMed でキーワード検索を行うと、膨大な数の論文がヒットします。その中から、患者が求めるアウトカムに最も近い論文を選ぶためには、論文の信頼性=Evidence Level を理解する必要があります。

ここでは、AAP(米国歯周病学会)が Annals of Periodontology で採用した分類に準拠します。

Evidence Level(証拠レベル)

  • Level 1: ランダム化比較試験(RCT)を含む論文
  • Level 2-1: 良くデザインされた非ランダム化比較試験
  • Level 2-2: 1つ以上のセンター(または研究グループ)によるコホート研究・ケースコントロール研究
  • Level 2-3: 観察研究などの非実験研究
  • Level 3: 専門家の経験・意見による報告

推奨度(リコメンデーション)は、以下の多要素を加味して決定されます。

エビデンスレベル / コスト / 臨床医の経験・能力 / 地域性 / 医療設備 / 保険適用 / 患者の価値観・嗜好
Evidence Level 図解

abstract(抄録)の読み方

介入研究(Interventional Study)の構造は概ね以下の通りです。

  • 研究目的(Purpose)
  • 研究方法・材料(Materials & Methods)
  • 研究デザイン(Design)
  • 研究設定(Setting)
  • 研究対象(Subjects)
  • 結果(Results)
  • 結果分析(Data Analysis)
  • 考察(Discussion)
  • 結論(Conclusion)

abstractを読む際のチェックポイント

  • 定式化した臨床問題と研究目的は近いか?
  • 結果(Outcome)は臨床的に望ましいか?
  • 研究方法と結果に矛盾はないか?
  • 考察に恣意性はないか?

私はまず abstract を精読して「読むに値するか」を判断し、その後に全文へ進むようにしています。

Cochrane Database of Systematic Review(CDSR)を読む理由

Cochrane Database of Systematic Review は、英国国民保健サービスの一環としてCochrane共同計画が提供する、 医学分野で最もバイアスの少ない Systematic Review の1つとされています。

Cochrane Database of Systematic Review(公式サイト)

CDSRを読むメリットは以下の通りです。

  • 治療トレンドの把握ができる
  • 高品質な研究デザインを学べる
  • 原著論文の参照元として信頼性が高い

ただし: Systematic Review であってもバイアスのあるものは存在します。 そのため、まずは CDSR で基本的な方向性を押さえた上で、個別論文の妥当性を評価することが推奨されます。

Meta-analysis と Systematic Review の違い

Systematic Review(システマティックレビュー)

焦点を絞った臨床疑問に対し、文献検索→選別→批判的吟味→総括までをEBM手法に基づいて行う総説論文です。 必ずしも定量化(統計)は必要ではありません。

Meta-analysis(メタ分析)

Systematic Review のうち、統計学を用いて複数の研究結果を「1つの定量指標として統合」したものを指します。 一般的にはオッズ比などが用いられます。

オッズ比の解釈:

  • 1より大 → 治療は「有害」寄り
  • 1より小 → 治療は「有効」寄り

診療ガイドラインとは

診療ガイドラインは、専門家・統計学者・疫学者・患者代表など多職種が協力し、 「現場での診断・治療の最適化」を目的に作成される総説論文です。

Evidence を網羅しつつ臨床的要素を強く反映するため、実際の意思決定に最も役立つ資料と言えます。

推奨度(Recommendation)の重要性

推奨度は以下の複数要素を統合し、治療選択の指針となります。

  • エビデンスレベルの信頼性
  • 治療コスト
  • 為害性の有無
  • 臨床医の経験値
  • 地域性・設備
  • 保険適用の有無
  • 患者の価値観

まとめ

Evidence-Based Dentistry シリーズも Part3 まで到達しました。 またいつか研究デザインの読み解き方や統計指標など、より専門的な内容を単発で解説していく予定です。

記事内容に誤りなどございましたら、ご指摘いただけますと幸いです。