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光治療(aPDT)は歯周病に本当に効くのか?|科学的根拠から考える最新歯周治療

こんにちは。
自由が丘の歯周病専門医、田川歯科です。

今日は、光線力学療法(aPDT)と呼ばれる"光で菌を殺菌する歯周病治療"を受けていた患者さんのお話と、最新の科学的エビデンスをご紹介します。

ご夫婦で通院されていた患者さんで、奥様は以前から当院へ、
ご主人は「自宅から近いから」と別の歯科医院に通われていました。

ご主人は長い間「歯がしみる」症状に悩まされ、
通っていた歯科医院から「重度の歯周病が原因」と説明され、歯周病治療を受け続けていたそうです。

しかし症状は改善せず、勧められるまま保険外治療としてペリオウェーブ(光殺菌療法)を何度も追加で受けていたとのこと。 治療直後は楽になるものの、また元に戻り、その繰り返しだったそうです。


最終的に奥様のご紹介で当院を受診されました。

当院で診察したところ、確かに重度の歯周病ではありましたが、 "歯がしみる主な原因は歯周病ではなく、進行したむし歯"でした。

むし歯治療を行うと、しみる症状はすぐに改善。 その後、通常の歯周病治療に移りました。

ところが―― これまで「長期間歯周病治療を受けていた」と伺っていたにもかかわらず、 歯ぐきの中には大量の歯石が残ったままでした。

「歯石を取らずに光殺菌だけ繰り返していた...?」 疑問に感じ、光治療について最新文献を調べ直しました。

見つかったのが以下のシステマティックレビュー(総説)です:

Antimicrobial photodynamic therapy for the treatment of periodontitis and peri-implantitis: An AAP best evidence review (2018)

この文献は、歯周炎やインプラント周囲炎に対する光線力学療法(aPDT)を、 従来の歯周病治療に追加した場合の有効性を評価した研究です。

2017年3月までに発表された RCT 研究のうち、 中等度〜重度の歯周炎/インプラント周囲炎を対象に 3ヶ月以上追跡した 28 論文を分析しています。

その結果:

  • 臨床的な改善は「わずかに有意差あり」(主に CAL・PD の改善)
  • 差は 1mm 未満であり、効果の確実性は「低〜中程度」
  • aPDTを推す理由の多くが「科学的裏付け」よりも「専門家の意見」

まとめられた結論は次の2点です:

  •  中等度〜重度の歯周炎患者において、 従来の歯周治療+aPDTは、従来の歯周治療のみ行なった結果と同等か、わずかながら良い結果が出る場合がある。
  • インプラント周囲炎に対して aPDT を追加治療しても、 スケーリング単独より優れているという明確なエビデンスは現時点でない。

■ これまでのレーザー・aPDT関連エビデンスを振り返ると

実は、レーザー・aPDTの歯周病治療への応用については、当院でも長年にわたり文献を追いかけてきました。振り返ってみると、いずれの時点の評価も同じ結論に達しています。

米国歯周病学会(AAP)公式声明(2011年):歯肉溝内デブライドメント・歯肉縁下細菌除去・SRPの補助的使用という3つの非外科的処置について検討されましたが、いずれも高い有効性を示す十分な根拠は得られず、Er:YAGレーザーは歯根表面への影響にも注意が必要とされました。

2011年時点で、レーザーの歯周病治療への応用による明確な治療効果は確立していない と結論づけられています。

また、レーザー使用を積極的に推奨できるほどの根拠は現状では不十分であり、 今後の研究によるさらなる検証が必要だとされています。

日本においても、レーザー治療を含む歯周病治療の選択にあたっては、 患者さんの状態や目的に応じ、適切な説明と慎重な判断が求められると当時の勉強会では結ばれました。

AAPの声明原文(英文):  米国歯周病学会のレーザー治療に関する公式声明

■a-PDT の総合的評価(システマティックレビュー)

The Effect of Photodynamic Therapy for Periodontitis. A Systematic Review and Meta-Analysis (JOP 2010)

非外科的歯周治療の補助としてのレーザー治療について、評価可能な論文はわずか4本にとどまり、統一した結論には至りませんでした。

また過去の a-PDT 研究をまとめたレビューでは、以下の点が指摘されていました。

  • メーカー主導研究によるバイアスの可能性
  • サンプル数の少なさ
  • 観察期間の短さ
  • 有効性・安全性の検証が十分ではない点

これらから、現時点ではa-PDT が従来の歯周基本治療(SRP)を上回る明確なエビデンスはないとまとめられています。

■ a-PDT の臨床効果を検証した研究

Clinical effectiveness of photodynamic therapy in the treatment of periodontitis.
(J Clin Periodontol 2009)

この研究では、次の2群を比較して a-PDT の効果が評価されていました。

  • スケーリング・ルートプレーニング(SRP)のみ
  • SRP + a-PDT 併用

その結果、a-PDT は特定の細菌に対してのみ効果が認められる一方、総合的な除菌効果は従来のSRPと大きな差がないと報告されています。

つまり、基本治療である SRP を適切に行うことが最も重要であり、SRP が不十分な場合は、a-PDT を併用しても改善が得られない可能性が示されています。

このように2009年から2018年まで、時期の異なる複数の文献を見ても結論は一貫しており、レーザー・aPDTを歯周病の標準治療に対する明確な優位性を示す治療として積極的に推奨できる段階には至っていない、というのが現時点での評価です。

科学的に確立されていない治療が広告の誇大な表現によって、 患者さんが判断しにくい状況が生まれてしまうことがあります。

だからこそ、私たち歯周病専門医は常日頃から、 正しい情報と確かな治療を提供し続けることが大切だと強く感じています。

目黒区、世田谷区、大田区、東横線・大井町線・田園都市線沿線にお住まいで歯周病治療をご検討の方は、
自由が丘駅から徒歩3分の歯周病専門医・指導医が在籍する自由が丘 田川歯科までお気軽にご相談ください。

(関連コラム:「ブルーラジカル」は歯周病治療を変えるのか ―― エビデンスの読み方を考える)