自由が丘の歯医者コラム

歯周病・インプラントの情報をAIで調べる前に ― 歯周病専門医が伝えたい、AIとの向き合い方

最近、インプラントのトラブルや他院での治療に疑問をお持ちの方が、来院前にAIで症状や治療法を調べていらっしゃるケースが増えてきました。多くの場合は診察がスムーズに進むのですが、中にはご自身の症状をAIに尋ねて導かれた「診断」や「治療方法」まである程度固まった状態で来院される患者さんがいらっしゃいます。

そのような状況だと、歯周病専門医として実際に診察した私がお伝えする診断や治療の選択肢が、患者さんが事前に想定していた内容と異なった場合に、ご説明の入り口から話がかみ合わず、対応に苦慮することがまれにあります。

歯周病専門医である私自身も、AIに調べものを手伝ってもらっている最中に、こちらが伝えた前提条件や訂正がAIに反映されず、話がどんどん違う方向へ進んでいってしまう、というもどかしい経験をすることがあり、その話を交えながら、歯周病やインプラントについてAIで調べる際に知っておいていただきたいと感じていることを今日はお伝えしたいと思います。

AIは指摘すれば直る。問題は「指摘できるかどうか」

私自身がAIに専門的な調べものを手伝ってもらっている時に、内容に誤りがあると感じた際、AIに誤りを指摘するのですが、AIは素直に誤りを認めて修正することがほとんどです。

裏を返すと、AIは間違えること自体は珍しくなく、正しく指摘さえできれば軌道修正できる、という性質を持っています。問題は、専門知識のない方がその「間違い」に気づく手段を持たないことです。

指摘という軌道修正のプロセスが働かないまま、AIが提示する診断や治療方針の方向へそのまま進んでしまう

これが、歯周病やインプラントについてAIで調べる際に、私が最もお伝えしたいリスクです。

なぜこういうことが起きるのか

AIは、もっともらしい文章を組み立てることに非常に長けています。しかし、その内容が事実かどうかを自ら検証する仕組みは持っていません。

実在する研究者の名前や、専門的な用語を使いながら、実際には論拠が薄い主張や、前提条件からズレた結論を、いかにも自然な形でつなげてしまうことがあります。

これは特定のAIサービスに限った話ではなく、生成AIと呼ばれる技術全般に共通する性質です。歯周病やインプラントのように、治療の考え方が年々アップデートされ、専門家の間でも意見が分かれるような新しい知見の分野では、この性質が特に影響しやすいと感じています。

AIで調べる際にできること

そこで、専門知識がなくてもAIに対するリテラシーを実践する方法を私なりに考えてみました。

  • AIで調べた情報は、あくまで漠然とした下調べとして受け止め、「これが答えだ」と決め込まない。
  • 「絶対に」「確実に」「効果がある」といった断定的な言い切りワードが出てきたときは、一度リサーチを立ち止まる。リスクとベネフィットが共存する医療の世界ではそこまで言い切れることは多くありません。
  • 同じ質問を別の日に尋ねてみる、あるいは別のAIにも聞いてみましょう。導き出された答えが大きく食い違う場合には、少なくともどちらかが不正確だというサインです。専門知識がなくても「答えがブレている」ことには気づくことが出来ますので、その時点でAIの回答への過信を控える判断ができると思います。
  • AIが示した診断や治療方針を、「確定した答え」として決め込まない。AIは間違いを指摘されれば修正しますが、専門的な見解の間違いを指摘するのは歯科治療知識がないと難しいです。なので自分の病気に対する確定的な判断は、実際に診察した専門医との対話に委ねていただくのが安全でしょう。

AIとの付き合い方

AIで歯周病やインプラントについて調べること自体は、悪いことではありません。実際、私自身も様々な調べものをする際にAIを活用しています。ただし、ここまでお伝えしてきたとおり、AIは間違えることがあり、しかもその間違いに気づけるかどうかは、質問を提起する側の知識量に左右されます。

もし、AIが示した「診断」や「治療方針」を確定した答えとして固めた状態で来院されると、実際の診察でお伝えする説明と食い違った際に、「どちらが正しいのだろう」と不安や疑念を抱えたまま治療に臨むことになりかねません。

AIで調べた内容は、あくまで漠然とした下調べ程度にとどめていただき、来院時には一度白紙の状態でご相談いただくことをお勧めします。実際の診断や治療方針は、問診を含めた正確な診査と、これまで積み重ねてきた数多くの治療実績や症例に基づいてご説明するようにしています。

当院では患者さんにご理解いただいた上で、ご自身が納得して治療を受けていただくことを、日々の診療で大切にしております。