我が国の主な死因として、悪性腫瘍が最も多く、続いて心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患が上位を占めています。
近年、いくつかの横断研究において、歯周病と循環器疾患との間に何らかの関連が示唆される報告があることをご存じでしょうか。
ただし、歯周炎が循環器疾患に直接関与しているのか、あるいはその逆なのかといった因果関係については明確には解明されておらず、一般的な医療情報として確立されているものではありません。
アメリカ歯周病学会(AAP)でも「歯周炎による炎症が何らかの関連を持つ可能性がある」という見解に留めており、明確な因果関係については示されていません。
また、医科領域でも、2012年にアメリカ心臓病学会(AHA)が「歯周炎とアテローム硬化性心臓疾患との間に明確なエビデンスは確認されていない」とする声明を発表しています。
ところが、このAHA声明の約2か月後に、The American Journal of Medicine に掲載された研究報告では、歯石除去を含む歯のクリーニングを受けた患者集団を7年間追跡したところ、急性心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患の発症リスクが減少したと報告されています。また、クリーニングの受診回数が多い患者ほど、この傾向がより明確だったとされています。
The association of tooth scaling and decreased cardiovascular disease
この研究は台湾で行われたもので、我々歯周病専門医の間でも大きな話題となりました。人種により研究結果が異なることもありますが、類似した傾向が示される可能性も指摘されています。
American Board of Periodontology(米国歯周病専門医)のMemberである西堀雅一先生が主催する院内勉強会では、これらに関連する研究論文の抄読を行っています。
Interdisciplinary Study Club Tokyo 西堀歯科勉強会
2013年4月5日の勉強会では、この歯のクリーニングと循環器疾患の関連についてまとめられた論文の抄読を私が担当し、以下のスライドを用いて内容を共有しました(スライドはイメージ画像として掲載しています)。
この研究で示されたように、歯周治療やクリーニングがどのように循環器疾患に影響するのかは現時点では解明されていませんが、一定の関連が示唆される報告もあります。
健康的な生活を送るための一つの要素として、歯周病専門医による定期的な口腔ケアを取り入れてみることも有用かもしれません。
目黒区、世田谷区、大田区、東横線・大井町線・田園都市線沿線にお住まいの方で歯周病治療に関してお悩みの方は、自由が丘駅から徒歩3分の歯周病専門医までお気軽にご相談ください。
【2026年追記】アメリカ心臓協会(AHA)による最新の声明について
上記の2012年のAHA声明から10年以上が経過した2025年12月、AHAは学術誌Circulationにおいて、この分野に関する声明を改訂しました。メンデル遺伝学的手法(遺伝情報を用いて因果関係を推定する手法)を用いた研究や、歯周治療の介入研究、炎症マーカーに関する研究など、2012年以降に蓄積された新たなエビデンスを踏まえ、歯周病とアテローム性動脈硬化性心血管疾患(心筋梗塞・脳卒中・心不全等)との関連を示すデータが増えていることが示されました。
ただし、この最新の声明でも「歯周病がアテローム性心血管疾患を直接引き起こすという明確な証拠」や「歯周治療そのものが心血管疾患を予防するという証拠」は、いずれも確立されていないと明記されています。つまり、両者に何らかの関連があることを示すデータは増えているものの、「歯周病を治療すれば心臓病が予防できる」と言った確定的な因果関係の立証段階には未だ至っていない、という基本的な立場は2012年から変わっておりません。
歯周病とアテローム性心血管疾患には、高齢・喫煙・肥満・運動不足・社会経済的要因など共通するリスク因子が多いことも指摘されており、これらの共通要因が結果に影響している可能性も念頭に置く必要があります。